阿部班 姉妹染色分体間接着の確立機構についての論文がNature Structure and Molecular Biology誌に掲載されました。
DNA複製によって倍加されたDNAはまったく同じゲノム情報をもつ姉妹染色分体を形成し、この二つの姉妹染色分体はその後二つの娘細胞に均等に分配されます。姉妹染色分体の均等分配のために中心的な役割を果たすのが「コヒーシン」と呼ばれるリング上のタンパク質複合体です。コヒーシンが適切に働かなくなると、染色体の異数化 (染色体の数的変化) など様々な異常が起こり、細胞の恒常性が破綻してしまいます。DNA複製によってできた姉妹染色分体を適切に繋ぎ止めるためにはコヒーシンがDNA複製装置と協調的に働くことが重要ですが、その機構の詳細は長い間不明なままでした。
今回、阿部班員らは、イタリアIFOM (分子腫瘍研究所) との共同研究において、コヒーシンのローダーであるSCC2/NIPBLとDNA複製装置のクランプであるPCNAの相互作用がコヒーシンの機能に重要な役割を果たすことを明らかにしました。SCC2/NIPBLとPCNAの関係性は酵母から動物まで高度に保存されていたことから、多くの生物の細胞活動に必須の機構であると言えます。SCC2/NIPBLがニワトリにおいて性染色体上に存在していることもあり、阿部班が作製したニワトリW染色体欠損細胞が本研究の進展に重要な役割を果たしました。現在阿部班では引き続きニワトリ W染色体欠損細胞の解析に取り組んでおり、その成果が性染色体サイクル研究の発展に貢献することが期待されます。