研究代表者 阿部 拓也
(東北医科薬科大学)
E-mail:abe.takuya@tohoku-mpu.ac.jp
略歴
2010 | 東北大学大学院薬学研究科博士課程修了 | 博士(薬学) |
2010~2016 | イタリア分子腫瘍研究所 (IFOM: The FIRC Institute Molecular Oncology) | 博士研究員 |
2016~2024 | 首都大学東京都市教養学部化学科 (2020年に大学名が東京都立大学に変更) | 助教 |
2024~現在 | 東北医科薬科大学薬学部 | 講師 |
研究概要
多くの生物において性染色体のうち片方の性にのみ受け継がれるY染色体やW染色体は誕生後大きく退化し、元々持っていた遺伝子の多くを失っていることが知られています。しかし、そこに残された機能が性決定に限られるのかどうかについてはヒトでも確定的な結論は出ておらず、他の生物においては知見がほとんどない状況です。私はヒト TK6細胞、及びニワトリ DT40細胞においてそれぞれY染色体とW染色体を喪失した細胞を作製しました。ヒト細胞ではY染色体喪失細胞で増殖能に影響は見られませんでしたが、W染色体を失ったニワトリ細胞では増殖能の大きな低下が観察されました。そのためニワトリ細胞のW染色体には体細胞が増殖する上で重要な機能がまだ残っていると言えそうです。一方、ヒトY染色体喪失細胞においても様々な遺伝子の発現量に大きな変化が観察されていることから、細胞種によってはこの転写における役割が増殖にとってプラスに働いている可能性があります。
そこで本研究ではこれらの細胞株の解析によって、Y/W染色体の体細胞での機能解明、及び機能領域の同定を行う予定です。性染色体に残された機能は、性および性染色体が失われないためのストッパーとしての役割を持っていると考えられることから、これらの研究成果によって性の消滅回避機構を明らかにし、「性染色体サイクル」の解明に貢献します。