風間班 ヒロハノマンテマの雌ずいの形成に関する総説がCytologia誌に掲載されました。
風間班の小林壮生大学院生らは、ヒロハノマンテマの性決定機構の1つである、雌ずいの発達に制御に関する総説を発表しました。風間班が昨年同定した雌ずい発達抑制遺伝子GSFYは、モデル植物シロイヌナズナのCLAVATA3(CLV3)遺伝子と同様の機能をもつと考えられます。シロイヌナズナのclv3の変異体では雌しべが大きくなることから、ヒロハノマンテマのY染色体にCLV 3が存在し、メスよりもオスの方がCLV3の数が多いことは、オスで雌しべの発達が抑制される現象をよく説明できます。
面白いことに、雌しべの発達においてCLV 3とは反対のはたらきをもつ(変異体では雌しべが小さくなる)WUSCHEL(WUS)遺伝子のオーソログは、ヒロハノマンテマのX染色体に存在し(SlWUS1)、Y染色体には存在しません。風間班員らは、このSlWUS1も雌しべの発達制御に関わっていると考えています。というのも、ヒロハノマンテマにコルヒチンという薬剤を投与してXXXYを持つ4倍体を作ると、雌しべの発達が抑制できなくなり両性花が咲くことがあるためです。この現象はX染色体上のSlWUS1のコピー数が増えたことでよく説明できます。GSFYもSlWUS1も、性染色体上の最も古い領域(性染色体が誕生した時からY染色体とX染色体との間で組換えが生じていなかった領域)に存在することから、GSFYとSlWUS1との間で組換えが抑制されることがヒロハノマンテマの性決定の誕生に関わったのかもしれません。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cytologia/88/2/88_D-23-00036/_article/-char/ja