風間班 植物の性決定機構の進化に関する新説を発表

 風間班の風間班員、小林壮生大学院生、及びOxford大学のFiatov教授は、植物の性決定機構の進化に関する新説をBioEssay誌に発表しました。風間班が昨年同定した雌ずい発達抑制遺伝子GSFYは、モデル植物シロイヌナズナのCLAVATA3(CLV3)遺伝子と同様の機能をもち、雌ずいの発達抑制に関与すると考えられます。これとは反対に、雌ずいの発達を促進するはたらきをもつWUSCHEL(WUS)遺伝子のオーソログは、ヒロハノマンテマのX染色体に存在し(SlWUS1)、Y染色体には存在しません。すなわち、SlWUS1をもつX染色体も雌しべの発達制御に関わっていると考えられます。
 本論文では、Y染色体が将来的に消滅したとしても、X染色体のWUS遺伝子のコピー数や発現量を変化させることでX染色体の本数のみで性が決定できるように進化できるという説を述べています。従来、XY型で性を決める植物や、X染色体の本数(X/Aバランス型)で性を決める植物の報告はありましたが、XY型からX/Aバランス型に進化しうることを述べたのは本論文が初めてです。本論文は、植物における「Y染色体消滅後の性の消滅回避を説明しうる」ことを記したものであり、本領域の研究推進に大きく貢献する成果と言えます。


http://doi.org/10.1002/bies.202300111