風間班 シロイヌナズナにヘテロ接合の欠失を誘発した時の遺伝子量補償の調査に関する論文のプレプリントをbioRxivに公開しました。

 ヒト、ショウジョウバエ、一部の植物の性染色体においては、X染色体の本数がオスとメスで異なることから生じる遺伝子コピー数の不均衡を解消するために、遺伝子発現レベルでオスとメスの間で均衡を保つ「遺伝子量補償」という機構が備わっています。風間班の研究では、以前にヒロハノマンテマのY染色体に重イオンビームを照射して大規模な欠失を誘発した結果、欠失した遺伝子と相同なX染色体上の遺伝子の発現量が上昇する「即時遺伝子量補償」が生じることを報告していました。


この現象が常染色体にも備わっているかを検証するため、本研究では、シロイヌナズナの常染色体にヘテロ接合の欠失を誘発し、その領域の遺伝子の発現量が上昇するかを調べました。その結果、シロイヌナズナでは即時遺伝子量補償が生じないことが明らかになりました。また、ヘテロ接合の欠失が発生した場合には、葉の大きさや開花のタイミングなど、表現型にも影響が及ぶことが確認されました。


即時遺伝子量補償がヒロハノマンテマ特有の現象であるのか、それともゲノムサイズや欠失領域の大きさの違いによって異なるのかは今後の研究課題です。しかし、本研究により、少なくとも即時遺伝子量補償というシステムがすべての植物に備わっているわけではないことを明らかにすることができました。


https://biorxiv.org/cgi/content/short/2024.09.20.614168v1